社長の会食代は交際費か、役員給与か——東京地裁が示した「業務との関連性」の水準

結論

役員が支出した会食代が交際費等になるかどうかは、金額でも使った勘定科目でもなく、その相手方が誰で、その相手と自社の業務が具体的にどうつながっているかで決まります。

そして、交際費等と認められなかった支出は「損金にならない」だけでは終わりません。役員給与として取り扱われた場合、法人の側で損金にならないうえに、同じ金額が個人の側で所得税の課税対象になります。

一方で、裁判所は個別の会食と個別の契約とが厳密に結び付いていることまでは求めていません。継続的に取引がある相手との会食であれば、業務との関連性は認められる余地があります。

役員が支出した会食代は、業務との具体的な関連性を説明できれば交際費等となり中小法人は年800万円まで損金算入できるが、説明できなければ役員給与とされ法人で損金不算入かつ個人に所得税が課される 会食代の支出 業務との具体的な 関連性を説明できるか あり なし 交際費等に該当 中小法人は年800万円まで損金算入 役員給与(経済的利益) 法人:損金不算入 個人:所得税が課税

争いになった事案

題材とするのは、東京地方裁判所が令和5年5月12日に言い渡した判決です(令和元年(行ウ)第607号・第614号)。原告は広告業や飲食店の企画・経営を営む資本金1億円以下の法人2社で、両社の代表取締役は同一人物でした。

以下の事案の内容と判決の判断は、税務通信3759号(2023年7月3日)などの専門誌報道に基づいて整理しています。

代表者は、写真家、建築家、クラブ経営者、バー経営者、飲食プロデューサーといった相手と会食を重ね、その代金を現金または代表者名義のクレジットカードで支払っていました。2社はこれらを交際費等として損金算入して申告しましたが、税務調査で交際費等に当たらないと指摘され、いったん修正申告をします。その後、やはり交際費等に該当するとして更正の請求を行い、更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けたため、その取消しを求めて提訴しました。

なお、この判決は原告・国のいずれも控訴せず、第一審で確定しています。上級審の判断は存在しません。

判決が示した3つの要件

判決は、法人が支出した飲食等の代金が交際費等に該当するというためには、その飲食等の日時が特定されていることを前提として、次の3点が必要であるとしました。

  1. その支出の相手方が、事業に関係のある者等であること
  2. その支出の目的が、相手方との親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図ることにあること
  3. その支出の態様が、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であること

そのうえで、支出の目的が一般的・抽象的なものでは足りず、具体的にその法人の業務と関連性があるものであることを要すると述べています。

ここで重要なのは、裁判所が同時に示した「関連性の水準」です。判決は、個別の会食と、その後に相手方との間で行われた個別具体的な取引・契約との厳密な結び付きが認められない限り業務関連性を認めない、という解釈は採りませんでした。中小法人に年800万円の定額控除限度額が認められていることや、現実の企業の営業・取引活動の実態にそぐわないというのがその理由です。

何が分かれ目になったのか

判決は、相手方ごとに結論を分けました。

相手方結論主な理由
写真家交際費等に該当代表者とともに複数企業の広告作成等の業務に関与し、互いに業務を発注する関係にあり、現在も取引が継続している
建築家交際費等に該当飲食店の内装デザインや本店事務所のデザインを依頼していた。逆にロゴや名刺のデザインを受注するなど、年5件から10件程度の取引が継続している
クラブ経営者該当しない会食が業務と関連することについて具体的な説明も的確な裏付けもない。単に人脈を広げるという抽象的な必要性だけでは足りない
バー経営者該当しないほとんどが相手方の経営するバーで行われており、客として対価を払って利用していたにとどまる。接待等の行為とは認められない
飲食プロデューサー該当しないクラブ経営者と同様の理由により、業務との関連性が認められない

分かれ目は明快です。双方向に仕事が行き来している関係かどうか、そしてその支出が接待という行為の形をとっているかどうかの2点です。

とくにバー経営者のケースは示唆的で、相手が事業に関係のある者であることと、その支出が接待であることは別の問題だと整理されています。相手の店で客として飲んだ代金は、接待等の行為には当たらないと判断されました。

交際費等でないとされた支出はどこへ行くのか

ここからが、この論点で最も注意すべきところです。

法人が役員に対して支給する給与のうち、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれにも該当しないものは、損金の額に算入されません(法人税法34条1項)。そしてこの「給与」には、債務の免除による利益その他の経済的な利益が含まれるとされています(同条4項)。

法人税基本通達9-2-9は、この経済的な利益の例示として、次のものを挙げています。

  • 役員等に対して機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの(同通達(9))
  • 役員等のために個人的費用を負担した場合における、その費用の額に相当する金額(同通達(10))

つまり、業務との関連性を説明できない会食代は、この受け皿に落ちる可能性があります。その場合に生じるのは、次の2つです。

法人の側では、交際費等としての損金算入が否定され、役員給与として見ても定期同額給与等に該当しないため、結局どちらの入口からも損金になりません。ここで見落とされやすいのが、中小法人の年800万円の定額控除限度額との関係です。この枠は交際費等に該当することが前提の枠ですから、役員給与とされた支出は、枠に収まるかどうかを議論する手前で落ちることになります。

個人の側では、同じ金額が役員に対する給与として所得税・住民税の課税対象になります。経済的な利益が所得税法上の収入金額に含まれることは所得税基本通達36-15が示すとおりで、源泉徴収の漏れに伴う負担も生じます。

損金にならないだけで済まない、という点がこの論点の重さです。

金額基準が効く場面と、効かない場面

「1人1万円までなら大丈夫」という言い方を耳にすることがありますが、これは判定の第2段階の話であって、第1段階には金額基準がありません。

交際費等に該当するかどうかの判定には金額基準がなく相手方と業務との関連性で決まる一方、交際費等から除外されるかどうかの判定には1人当たり1万円以下という金額基準と書類保存の要件がある 第1段階:交際費等に「該当するか」 金額基準はありません。相手方が誰か、業務と具体的に関連するかで決まります 第2段階:交際費等から「除外されるか」 1人当たり1万円以下の飲食費で、所定事項を記載した書類を保存している場合

交際費等から除かれる飲食費の金額基準は、1人当たり1万円以下とされています(租税特別措置法施行令37条の5第1項)。この1万円という基準は令和6年度税制改正で5,000円以下から引き上げられたもので、令和6年4月1日以後に支出する飲食費から適用されます。

注意点が3つあります。1人当たりの金額が1万円を超えた場合は、超過部分だけでなくその飲食費の全額が交際費等となります。判定は支出日を基準に行うため、令和6年4月1日をまたぐ事業年度では同一年度内に5,000円基準と1万円基準が混在します。そして、この除外を受けるには、飲食等のあった年月日、参加した相手方の氏名または名称およびその関係、参加者数、費用の額と飲食店等の名称・所在地などを記載した書類の保存が必要です(租税特別措置法61条の4第8項、同法施行規則21条の18の4)。

なお、今回の事案では、帳簿書類に一定事項の記載がなかったため接待飲食費の50%損金算入の特例が適用されず、中小法人の年800万円の枠の対象となる交際費等に該当するかどうかが争点になりました。記載の不備は、50%の特例と1万円基準の両方を同時に落とすことになります。

接待飲食費の50%損金算入の特例と中小法人の定額控除の特例は、いずれも令和9年3月31日までの間に開始する事業年度について適用されます(租税特別措置法61条の4第1項)。

実務から見た評価

この判決の内容は、きわめて常識的なものと考えられます。交際費等と役員給与(役員賞与)の境は、その支出が直接事業と関連しているかどうかが最も重要な判定基準の一つである、ということを素直に示しています。

事業に直接関連している費用であれば、社会的常識の範囲内である限り、金額の大小はそれほど重要ではありません。判定を分けるのは金額ではなく関連性です。逆に言えば、金額が小さいから安心ということもありません。

そして、事業との関連性がない支出をした場合には、当然に交際費等ではなく役員給与として取り扱われる可能性があります。その場合、法人で損金にならず、同じ金額に個人の所得税が課されるという二重の負担が生じます。この構造を理解しているかどうかで、日々の記録の付け方は変わってくるはずです。

判決が求めた水準は、決して過大なものではありません。誰と会ったのか、その相手と自社はどういう仕事の関係にあるのか。この2つを後から説明できる状態にしておく、という程度のことです。

まとめ

  • 交際費等に該当するかは、日時の特定を前提に、相手方が事業に関係のある者等か、目的が取引関係の円滑な進行にあるか、態様が接待等かの3点で判断されます
  • 業務との関連性は、個別の会食と個別の契約との厳密な結び付きまでは求められませんが、単に人脈を広げるという抽象的な必要性では足りません
  • 交際費等と認められない場合、役員給与として法人で損金不算入となり、あわせて個人に所得税が課される可能性があります
  • 1人当たり1万円以下という金額基準は、交際費等からの除外を判定する場面のもので、令和6年4月1日以後に支出する飲食費から適用されます

役員名義のカードで支払うこと自体が直ちに問題になるわけではありませんが、後から業務との関連性を説明する負担は確実に重くなります。日付と店舗しか残らない領収書だけでは、相手方も関連性も示すことができません。

当事務所では、法人税の申告に関するご相談や、経費の区分についての実務的なご相談を承っています。気になる点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

← 記事一覧へ戻る