結論は3つ
- 食品を売っている免税・簡易課税の事業者(小売・製造・卸・農業など)は、本則課税に移ると消費税が還付される可能性があります。令和9年中に「移るかどうか」を決めてください。
- 届出の期限は、個人事業者なら令和9年12月31日となる見込みです。確定申告の時期(令和10年3月)ではありません。過ぎたら取り返しがつきません。
- 飲食店は逆です。簡易課税のままが有利なケースが多く、動かないのが基本です。
以下はすべて2026年9月8日時点の自民党税制調査会の「案」です。法案・通達はまだ出ていません。
期限は「年末」。確定申告のときに気づいても手遅れ
本則課税に移るには、免税事業者は「課税事業者選択届出書」、簡易課税事業者は「簡易課税制度選択不適用届出書」を出す必要があります。本来は課税期間が始まる前に出すルールですが、今回の案では「令和9年4月1日を含む課税期間の末日まで」に出せばよいとされています。簡易課税を選んで2年たっていない人も、この場合は本則に移れる案です。
つまり、個人事業者と12月決算の法人は令和9年12月31日が期限です。確定申告の準備を始める令和10年の年明けには、もう間に合いません。3月決算の法人なら令和10年3月31日が期限となる見込みです。
本則課税は「届出1枚」で終わりません
ここが実務で一番見落とされやすい点です。簡易課税や免税では、売上さえ把握できていれば申告できました。本則課税では、仕訳の一つ一つに「10%か、1%か、非課税か」という課税区分を紐づけて記帳し、仕入の消費税を積み上げて計算します。これまで自分で申告書を書いていた事業者ほど、記帳のやり方そのものが変わることになります。
したがって、本則課税を考えるなら、期限を待たずに早めに専門家へ相談することが望ましいと考えられます。理由はもう一つあります。令和9年に向けて同じ判断を迫られる事業者が全国で一斉に増える一方、税理士の側にも受けられる件数の限界があるからです。年末ぎりぎりに相談しても、記帳体制の構築まで含めて引き受けられる事務所は限られてくる可能性があります。
飲食店は簡易課税のままでよいことが多い
飲食店(外食)は、売上の税率は10%のままで、食材の仕入だけが1%になります。本則課税に移ると控除できる仕入の消費税が減り、納税が増える方向に働きます。簡易課税を続ける方が有利なケースが多いと考えられます。
なお、簡易課税を続ける事業者がテイクアウトや物販で1%の飲食料品を売る場合、その部分は売上の消費税と同額を控除でき、納税額がゼロになる特例案も示されています。飲食業のみなし仕入率の変更は行わない案です。
その他の特例案(知っておけば足りるもの)
- 総額表示:税率が変わる前後2か月間は、誤認されない措置をとれば新旧どちらの税込価格を表示してもよい(税抜のみの表示は引き続き不可)
- 中間申告:前年の申告を1%で計算し直した額を基に中間申告できる
- 予約販売・通信販売:税率変更の3か月前を指定日とし、それより前の契約には8%を適用する経過措置
- 本則課税に移る農林漁業者・食品事業者・外食事業者への相談対応や税理士費用等の支援は、予算編成で具体化する予定
総額表示の特例は自民党の公式発表(2026年9月2日)で確認できます。その他の詳細は税務通信3915号(2026年9月7日)の報道に基づくもので、税制改正大綱・法案・通達の公表後に変わる可能性があります。
まとめ
食品を売る免税・簡易課税の事業者は、本則課税に移れば還付を受けられる可能性がありますが、期限は確定申告のときではなく「令和9年4月1日を含む課税期間の末日」(個人なら令和9年12月31日)となる見込みです。本則課税は記帳のやり方が変わるため、有利不利の判定と記帳体制の準備を含めて、早めに専門家へ相談することが望まれます。飲食店は簡易課税のままが基本です。
当事務所では、消費税の課税方式の有利判定や、本則課税への移行に伴う記帳・申告体制のご相談を承っています。気になる点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。