レジ改修費は修繕費で一括経費に 飲食料品の消費税1%引下げ前に押さえる税務処理

結論:改修費は経費、補助金で買ったレジは圧縮記帳

令和9年4月1日から2年間、飲食料品の消費税率を1%に引き下げる方針です。令和8年9月15日に大綱が閣議決定されました。現時点では法案提出前の段階です。

税率が変わる以上、レジの対応は避けられません。税務上のポイントは3つです。

  • 税率変更に対応するだけのレジ・システム改修費は、修繕費として一括で経費にするのが一般的です。
  • 「デジタル化・AI導入補助金」でスマートレジを先に導入した場合も、法人は圧縮記帳、個人事業主は総収入金額不算入の対象になると解説されています。
  • 令和11年4月には税率が8%に戻ります。税率の変更は2回。だからこそ、税率変更に強いシステムへの乗り換えも選択肢です。
税率変更に対応するだけの改修は修繕費、機能追加を含む改修は資本的支出。資本的支出でも20万円未満などの形式基準に当たれば修繕費にできる。 レジ・システムの改修費 税率変更に対応するだけの改修か? はい いいえ(機能追加あり) 修繕費 その期に一括で経費 資本的支出 資産に計上して償却 20万円未満・60万円未満・ 取得価額の10%以下なら修繕費可

改修費は「中身」で修繕費か資本的支出かが分かれる

ソフトウエアの修正費用の扱いは、通達で整理されています。現状の効用を維持するための修正は修繕費、新たな機能の追加や機能の向上は資本的支出(資産に計上して償却するもの)とされています(法人税基本通達7-8-6の2、所得税基本通達37-10の2)。

税率を8%から1%に切り替えるだけの修正は、レジの機能を維持するためのものです。修繕費として扱うのが一般的と考えられます。2年後に8%へ戻す修正も、同じ考え方です。

ただし、税率対応を機に新しい機能を加えると、その部分は資本的支出になり得ます。セルフレジ化や在庫管理との連動などが典型です。

資本的支出が混じっても、修繕費にできる基準があります。

  • 1回の修理・改良等の費用が20万円未満なら、修繕費にできます(法人税基本通達7-8-3)。
  • 修繕費か資本的支出か明らかでない金額が60万円未満、または前期末の取得価額のおおむね10%以下なら、修繕費にできます(法人税基本通達7-8-4)。

個人事業主も同じ基準です(所得税基本通達37-12、37-13。10%基準は前年12月31日の取得価額で判定)。

実務では、見積書や作業内容の説明で「税率変更への対応」と分かるようにしておくことが大切です。

スマートレジは「先に導入、補助金は後から」

中小企業庁は令和8年9月15日、「デジタル化・AI導入補助金」でスマートレジの導入やPOSレジの改修を支援すると公表しました。

税率引下げに間に合わせるため、9月15日以降に先に導入・改修し、事後に申請できる「事前着手制度」が設けられています。申請受付は2027年1月頃の予定です。補助対象期間は2027年3月までを予定しており、調整中とされています。

補助額は、ソフトウエア等が1機能で最大50万円、2機能以上で最大350万円です。補助率は、50万円以下の部分が4分の3(小規模事業者は5分の4)、50万円超から350万円までが3分の2です。タブレットなどのハードウエアは最大20万円で、補助率は2分の1です(中小企業基盤整備機構の掲載情報による)。

注意点は2つです。対象は事務局に登録された製品に限られます。また、事後申請のため、契約・納品・支払いの書類をすべて保管しておく必要があります。

令和8年9月15日に事前着手制度が始まり、令和9年1月頃に補助金の申請受付、3月に補助対象期間が終わる予定。令和9年4月1日から2年間は飲食料品の税率が1%となり、令和11年4月1日に8%に戻る。 R8.9.15 事前着手制度 開始 R9.1頃 補助金の申請受付 R9.3 補助対象期間の末日 R9.4.1 飲食料品の税率1% 2年間 R11.4.1 税率8%に戻る ※補助金の日程は公表時点の予定。税率引下げは大綱段階(法案提出前)

取得と補助金の年度がずれても、圧縮記帳は使える

補助金で固定資産を取得した場合、法人は「国庫補助金等の圧縮記帳」により、補助金に対する課税を先送りできます(法人税法42条1項)。個人事業主は、補助金を総収入金額に算入しない扱いです(所得税法42条1項)。税務の専門誌では、今回の補助金もこの対象と解説されています。

事前着手制度では、取得が先、補助金が後です。12月決算の法人なら、令和8年12月期に取得し、令和9年12月期に補助金が入る、という流れが想定されます。

この場合も圧縮記帳は使えます。法人税法42条1項は、前の事業年度に取得した減価償却資産も対象に含めています。圧縮できる限度額は、補助金の返還不要が確定した日の帳簿価額に「補助金額÷取得に要した金額」を掛けて計算します(法人税法施行令79条の2)。すでに償却した分を織り込んで調整する仕組みです。

ここに落とし穴があります。圧縮記帳の対象は、固定資産の取得や改良に充てる補助金です。クラウド型レジの月額利用料など、費用に充てる補助金は対象外で、そのまま収益になると考えられます。利用料は経費になるので、課税所得への影響は同じ年に相殺されるのが通常です。ただし、圧縮記帳のような先送りの効果はありません。

圧縮後の金額で、使える特例が変わる

圧縮記帳をすると、圧縮後の金額が取得価額とみなされます(法人税法施行令54条3項)。この金額で、特例の当てはまりを判定します。

圧縮記帳後の金額が取得価額とみなされ、40万円未満なら少額減価償却資産の特例、ソフトウエア70万円以上なら投資促進税制または経営強化税制、器具備品40万円以上なら経営強化税制の対象になり得る。 圧縮記帳後の金額 = 取得価額とみなす 40万円未満 少額減価償却資産の特例 一括で損金(年300万円まで) ソフト70万円以上 中小企業投資促進税制 中小企業経営強化税制 器具備品40万円以上 中小企業経営強化税制 (計画の認定が前提) ※いずれも中小企業者等・青色申告などの要件あり。投資促進・経営強化は令和9年3月31日まで
  • 40万円未満:中小企業者等の少額減価償却資産の特例により、全額をその期の損金にできます(租税特別措置法67条の5。青色申告が要件。年300万円まで。令和11年3月31日までの取得が対象)。個人事業主は同法28条の2です。
  • ソフトウエア70万円以上:中小企業投資促進税制(同法42条の6)または中小企業経営強化税制(同法42条の12の4)の対象になり得ます。
  • 器具備品40万円以上:中小企業経営強化税制の対象になり得ます。
  • いずれにも当てはまらない場合は、通常どおり耐用年数で減価償却します。

たとえば、50万円の機器に補助金20万円を受けて圧縮記帳すると、取得価額は30万円とみなされます。40万円未満なので、少額減価償却資産の特例の対象になり得ます。

投資促進税制と経営強化税制は、指定期間が令和9年3月31日までです。経営強化税制は、経営力向上計画の認定を受けていることが前提です。対象業種の確認も含め、取得前の確認が欠かせません。

2年で戻る税率のための改修。それでも「直しやすさ」で選ぶ

ここは、はっきりさせておく必要があります。

2年で元に戻る税率のために、改修費をかける。事業者から見れば、合理性に乏しい話です。しかも税率の変更は、令和9年4月と令和11年4月の2回です。

それでも、対応しないという選択肢はありません。

大綱自身も、緊急時の税率変更に柔軟に対応できるシステムの普及促進を掲げています。消費税率は今後も変わり得る。そう考えておくのが現実的です。

だとすれば、今回の改修は、税率変更のたびに大きな費用がかからないシステムへ乗り換える機会でもあります。改修費は修繕費。乗り換えには補助金と圧縮記帳。税制上の手当ては揃っています。

選ぶ基準は一つです。次の税率変更にも、手間なく対応できるかどうか。

当事務所では、レジ改修費の経理処理、補助金を受けた場合の圧縮記帳、各種特例の有利判定についてご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。

根拠資料

  • 飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱(令和8年9月15日閣議決定)
  • 法人税基本通達7-8-3、7-8-4、7-8-6の2/所得税基本通達37-10の2、37-12、37-13
  • 法人税法42条1項、法人税法施行令54条3項、79条の2/所得税法42条1項
  • 租税特別措置法28条の2、42条の6、42条の12の4、67条の5
  • 中小企業庁「変化の時代に対応できるスマートレジの導入支援(事前着手制度)」(2026年9月15日)
  • 税務通信3919号(2026年10月12日)

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